投稿日:2022年3月29日 | 最終更新日:2022年3月31日
第2話について深堀り
本記事は一部にプロモーションを含みます
第1話については前回のインタビューでお伺いしたので、今回は第2話から始まります。
不器用な女子大生と明夫
ー登場した女子大生はかなり不器用で観ている方がハラハラしてしまい、チャットも激しく盛り上がりました。
馬杉監督:
根暗なキャラクターでした。
スローなドラマなのでチャットに書き込める時間もあり、コメントがドラマを補填して埋めていく面白さがありました。
ードラマを観ていて気づかないこともチャットにより知ったり
馬杉監督:
良く分かるなと。
ドラマを撮影した身内がネタバレしているのかと驚きました。
ー配信では広告が入ってしまい、途中でチャットが先行してドラマが後から流れる現象がありました。
馬杉監督:
それも一種のネタバレとなってしまいますね。
大沼さん:
遅れて観た人のためにも、上手いことチャットも追っかけ機能があったらいいですね。
ー酢豚なのに「ほりにし」しかない状況に明夫もほっておけないと
馬杉監督:
第2話は不安でした。
「女の子に話しかけるおじさん」というシーンはハードルが高かったので、鉈で指を切りそうな状況がハッキリ分かるような演出をし、話かけるきっかけを作りました。
各話ごとでプレゼントされる品にも注目
ー第5話を除き、毎回何かプレゼントがありました
馬杉監督:
手渡されるシーンはほぼ無いのですが、次の回には映っています。
第2話のスパイスほりにしは実は使い込まれていて、ラベルも剥がして1話毎に減らしています。
最終話はちょっとしかないはずですよ。
<作品中に主人公がプレゼントされる品>
第1話:切子グラス
第2話:スパイスのほりにし
第3話:ナンガの寝袋
第4話:湯たんぽ
第5話:鹿の角(明夫が山中で自ら見つける)
第6話:トヨトミのレインボーストーブ
第3話について深掘り
キャラクターについて
ー第3話はやられました。温水さんとは分かりませんでした
馬杉監督:
みんな分からなかったみたいです。
自信はありました。
一番喋らない回で料理対決をしました。
お互いに食べさせ合うのも違うし、誰も評価せず自分が食べるという闘いが面白い。
「温水さんに中国人のキャラクターを演じていただきたい」と話が出まして。
近藤さんと温水さんは昔に共演したことがあったこともあり、オファーさせていただきました。
結果的に色々削ぎ落としたら、結果的にセリフは「家族」だけになりました。
ー陳さんのテントがかっこいいですね
馬杉監督:
muracoのGUSTAV(グスタフ)です。
黒に拘る熟練キャンパーで、ギアでマウント取る系の陳のギア選びは大変でした。
大沼さん:
料理も陳の方が高級でした。
蟹とかグリンピースが入っていたりの対比が描かれています。
対決について
ー第3話はスピード感がありました!
馬杉監督:
はい。
カット割りが早く面白い映像となりチャットも盛り上がり楽しかったです。
現場でも爆笑でした。
二人を同時に対決させて、カメラも2チームに分けて撮影しました。
リアリティとくだらない対決をしているおじさんが面白くて、撮影している時に手応えがありました。
大沼さん:
中華鍋を置くタイミングがぴったりで、リアルにシンクロしていてすごいなと思いました。
馬杉監督:
こちらで合図して指示したわけではないですからね。俳優同士の息がぴったり合っていました。
ー第1話の角野さんや第3話の温水さんはいつものキャラクターと全然違うので驚きました
馬杉監督:
温水さんは大河ドラマで武将の役に出られてたのですが、一般的にはバラエティーの印象が強いのかもしれません。
角野さんは「渡る世間は鬼ばかり」のイメージの中で、渋いおじいさんに驚いたのではないでしょうか。
猫の登場
ー敵対しながらも猫のシーンで友情が芽生えましたが
大沼さん:
実は猫のキャスティングが一番苦労しました。
馬杉監督:
動物は言う事を聞いてくれないから。
大沼さん:
キャンプ場の広いところでリードもなしでは猫が逃げてしまうから、出てくれる猫を探すのに苦労しました。
ー言うことを聞いてくれる犬じゃだめだったのですか?
大沼さん:
二人の仲を取り持つのは猫じゃないとだめでした。
馬杉監督:
やはり猫じゃないと。
二人共中華料理人として野良猫にごみを荒らされる経験があるから猫が嫌い。
その共通の意識があるから仲直りできる。
猫かカラスかとも考えましたが、カラスでは撮影は難しいので猫となりました。
第4話について深掘り
ランタンロボット『ちまき』の登場
ー『ちまき』はどこからの発想でしたか
馬杉監督:
僕が第1話と第5話を、女性脚本家の三井が第2話と第3話を、もう一人の男性脚本家の江藤が第4話と第6話を書きました。
「不器用なおじさんがロボットに心を開いたら面白いのでは」と持ってきました。
今までで一番喋る明夫にしたいし、一番心を開くような回にしました。
でも、明夫が『ちまき』の扱いに慣れてきたころに、電源を切って持って行かれてしまいます。
明夫は少し切ない表情を見せますが、その「切なさ」こそ『おやじキャンプ飯』っぽいと思いました。
また、『ちまき』の声が千秋だったら明夫も心を開くのではと、千秋の声で喋らせるキャラクターとなりました。
大沼さん:
俳優の長沢裕ちゃんが、休み時間もロボットの声をめっちゃ練習していました。
現場でカメラの横に立ってもらって、明夫さんを前にして喋ってもらいました。
ロボットの声とランタン
ー「ロボットの声が千秋の声だ」と早くに分かりました
馬杉監督:
すごいな、良く気づいてくれたなと。すごく良い回だった。
第4話が35分と、シーズン2の中で一番長い回でした。
撮る側としては、ゲストが動かなくて、絵が変わらないので結構難しい。
人間同士が喋るなら色んな動きが楽しめるけど、ロボットの眼だけがキラキラしていて。
ゲストはロボットなので、実質近藤さんのひとり芝居であり、近藤さんの演技力がないと絵がもたないのですが、ドラマは自然に楽しめるものになりました。
テクニックが必要な回でしたね。
ーランタンをベアボーンズにしたのはどうしてでしょうか
馬杉監督:
一番可愛らしい形で宇宙っぽい感じなので、最初からベアボーンズのイメージでした。
JAXXSA(作中の架空団体)が開発したのは丸い球体の本体で、ランタン型にカスタマイズしたのは千秋です。
ランタンにしたのは千秋のギャグでありました。
大沼さん:
登場したのは馬杉さんの自前のランタンなんです。
馬杉監督:
撮影に使うから僕のメインランタンが無くなってしまったんですよ。
今は車にありますが、頭を紛失してしまったので半分分解された状態なんです。
ちまきの名前の由来
ー名前を『ちまき』としたのは
馬杉監督:
明夫がロボットを娘の千秋と呼ぶには躊躇するので代わりに『ちまき』と名付けました。
イントネーションも千秋と似せて愛着をもたせました。
料理も『中華ちまき』なら風邪をひいた明夫にも栄養価が高いし、絵的にも美味しく見せられるので、両方の意味でちまきにしました。
ー娘と重ね合わせているのですね
馬杉監督:
うん。そうですね。
中華ちまきについて
ー中華ちまきも美味しそうでした
馬杉監督:
もち米の代わりに餅を切って使いました。いいアイデアだなあと。
他でも同じレシピが紹介されていました。
中華鍋で蒸して調理したのは料理指導の岡山君が考えてくれました。
料理人でありBBQのプロの資格を持っているので、キャンプ場で明夫のギアで出来る料理を考えて作ってくれました。
ロケについて
ー釣りのシーンを撮影したのは、キャンプ場の前の川ですか?
大沼さん:
はい。階段が無いので降りるのには危ないのですが。
馬杉監督:
明夫も遊漁券を買っていて、よく見たらチケットを持っています。
大沼さん:
実際僕も川に落ちてずぶ濡れになり、竿が流されたので、明夫の気持ちが分かりました。
ー撮影は9月の終わりから10月の中旬でしたね
馬杉監督:
ロケにはそれほど寒くなく行えました。ドラマ的には12月の設定です。
ー移動スーパーまごの手は
馬杉監督:
和歌山で実在しています。
実際はキャンプ場に来ているのではないのですが、移動スーパーがあったらいいなと思いました。
週末キャンプ場に来たら売れそうじゃないですか。
『ちまき』の後は『湯たんぽ』
ー新しいちまきが来るかと思えば湯たんぽが来ました
馬杉監督:
元々テスト品として送ってきて「回収するから」と伝えていたけれど、明夫は覚えていなくて。
単純に回収する時に寒くなるので千明が湯たんぽを送ったら明夫が勘違いしたのです。
ー「ちまきを通して千秋が見ていたのでは」とコメントにありましたが
馬杉監督:
それは違っていて、『ちまき』は独立したロボットでした。
第5話について深掘り
山へ入る
ー明夫は山に入りましたが
馬杉監督:
最低限の装備だけを持って入りました。
一応我流でキャンプをやってたくらいの事を覚えていて、リュックも古いものを使っています。
大沼さん:
モンベルの社員さんの個人の持ち物をお借りしました。
実際ここの裏山は入ったらダメですよ。
ーきのこは遊びの回でしょうか
馬杉監督:
遊びのつもりでは無かったけど反響が大きかったです。
ひとつのネタとして、「きのこは危ないから怖くて採ってはいけない」という妄想のシーンにしました。
食べたらどうなるか笑っても怒っても良いので、近藤さんに何パターンかおかしくなる芝居をお任せしたものでした。
その中の笑い茸の演技が面白くて一発OKにしました。
大沼さん:
このシーンも現場は大爆笑でした。
馬杉監督:
いい芝居の時は現場の空気が変わりますね。
野営の考え
ー中華鍋は登場しませんでした
大沼さん:
中華鍋は重たいので持って行きませんでした。
馬杉監督:
野営は取り扱うジャンルとしては難しくて。
最低限のガスで出来て山菜を使う料理を作りました。
ホタテの缶詰は元々塩が効いていて、お湯で薄めるだけでホタテスープになり、のびるを刻んで入れ、むかごはオイルサーディンに入れてシンプルな料理にしました。
ーロープワークもしっかりされてましたね
馬杉監督:
明夫が昔やっていたのを思い出しながらやりました。
12月といっても和歌山だから暖かいイメージをしていました。
第6話の公開が2月だったから、軽装でのビバークは無理だろうと言われるのが嫌で、3月に公開しようかとも思ってました。
「一番寒い時期に野営したらあかん」と心配したけど、チャットで批判は無かったので良かったです。
ー観ていてもそれほど真冬では無いんだろうなと思いました
馬杉監督:
はい。伝わっていて良かったです。
明夫がその日の温度や気候をスマホで確認している設定はありましたが、カットしました。
第5話は最終の第6話に繋がるように、独りぼっちになって本当に寂しくなって奥さんの事を思い出すというストーリーに持っていきました。
明夫が野営で寝ている時に、一度目を覚まして鳥とか鹿とか動物の鳴き声がうるさい中でまた眠りにつくシーンがありましたが、僕が野営をした時に一番感動したのがこんな体験なんです。
初めての野営は寝るまでは怖いんですよね。襲われるんじゃないかとか。
ふと目が覚めた時、自然と一体化している体験があり、怖さがなく、虫や動物の鳴き声がめちゃくちゃうるさい。
でも、ある種安心してまた眠りにつく。
僕の中で野営の醍醐味と思っている所を表現したかったのです。
キャンプ生活
ー川に落ちて風邪をひいたり遭難したり、この先どうしようとか思ったのでしょうか
馬杉監督:
明夫は店と家を失って激動な生活の中で、やっとキャンプ生活が馴染んできたところですが、さすがに山で独りぼっちになった時、無意識に家族で行ったキャンプの事を思い出しました。
でも、今の生活に後悔はなく、寂しい辛いまでの感情はありませんでした。
ーキャンプ生活の期間はどれくらいでしょうか
馬杉監督:
シーズン1は店を失って1ヶ月後から始まり、京都のキャンプ場で1ヶ月くらい過ごしました。
シーズン2では京都のキャンプ場を冬期休暇で追い出されて、和歌山に辿り着き1ヶ月くらいの話となります。
移動的には2週間くらいかな。
最終話(第6話)について深掘り
千歳の登場
ーやはり最終の第6話では奥さんを中心にと?
馬杉監督:
はい。やりたいと決めていました。
シーズン1でのキーマンは娘だったので、やっぱりやるなら次は奥さんかなと頭の中でありました。
ーとはいえ存在は匂わせながらもなかなか奥さんが登場せず、このまま現れないのかもと心配しました
馬杉監督:
はい。でも早い段階から奥さんの登場を決めていました。
千秋の策略
ーオンライン対面となったのは
馬杉監督:
千秋の策略でした。
千秋の誕生日の流星群の日に母娘キャンプをしようと母を誘うが、ドタキャン。
「キャンプ場の予約をしているから」と母だけを行かせて、ビデオ電話で誕生日会を開き、サプライズで父と繋げました。
二人が同じキャンプ場にいるとどこかで気づいて、出会ったらいいなと考えました。
千歳は第3話の最後にキャンプ場の下見に来ていました。
同じキャンプ場にいた2人
ービデオ通話の中で千歳の背景がテントだったので、キャンプに来ていると分かりました。
馬杉監督:
みんな気づくのが早かったですね。
予定ではテントという事に気づくのを遅らせたかったので、部屋っぽい白いテントのカーカムスにして、白い部屋みたいにしようと思いました。
予想ではもうちょっと気づかないだろうと思い、ヒントのつもりで「少し窓を開けてみたら」という遊び心のつもりが、すぐテントだとバレたという。
それは想定外でした。
ーみなさん良く観てます
馬杉監督:
難しいのが「どのデバイスで観ているか」なのです。
スマホなのかパソコンなのか大画面で観るのかによって、僕たちは普段画角を変えます。
ドラマはYouTubeなのでスマホが一番多いのではと思い、ちょっとくらい緑が見えても分からないんじゃないかと。
確かにPC画面で観たら分かるんですよね。
ー私はパソコンで観ましたが1回目でテントだと気づき、2回目でキャンプ場だと分かりました。チャットでは芝の感じが一緒だという書き込みもあったり
馬杉監督:
すごいなぁ。チャットの面白さですね。
ー同じ場内放送があって明夫と千歳は変な顔となり、千秋はにやにやしていました
大沼さん:
説明不足な回でもあったのですが…。
馬杉監督:
ギリギリなところを狙いました。
この作品がテレビドラマで、ながら見をしてたら全然ついて来れないんじゃないかな。
千秋の誕生日の事も第5話の最後にスマホで見えるか見えないかくらいしか出してなかったし、奥さんの話しも出してなかった。
場内放送がハウリングするとかも、わざと分かりにくい方に我々も演出をしています。
キャンプ場でばったり出会うというシーンにしても良いのに、みんながついてきてくれるのは嬉しかったし楽しかったです。
千歳登場にいたった「ここだけのはなし」
ー明夫と千歳が千秋のだまし討ちで久しぶりに再会してもそっけない態度でしたね
馬杉監督:
どうでしたか?
ーヤング千歳はすごい可愛らしく真っすぐに明夫を見ていたのに、今は全然違う。時を経てその関係性がリアルでした
馬杉監督:
実は、Yaikoさんにシーズン1を取材してもらったとき、シーズン2は奥さんを出してみてはどうかとなりました。
Yaikoさんが離婚経験があると聞いたので、シーズン2の展開のために僕が逆取材をしていました。
その時の話が活きています。
別れた旦那さんを、愛とかより心配すると言っていたのが勉強になりました。
僕は取材したことから本を書いていくタイプなんです。
大沼さん:
何なら馬杉さんが嫁さんと離婚したらどうなるかのような話しもしたり。
馬杉監督:
元々借金してドラマを創ったので、会社が倒産したら奥さんにも迷惑を掛けるし離婚しておこうかと話をしたら、奥さんにめっちゃ怒られました。
シーズン2も元奥さんの話だから、僕も本当に離婚したら明夫の気持ちが分かるかなと言ってしまい、また奥さんに怒られました。
馬杉監督の奥様も出演?
ー奥様も制作に関わっているのですね
馬杉監督:
奥さんも編集マンで、2人で起業しました。
シーン1は監督補佐という立ち位置で現場にいて彼女が編集していました。
ドラマの創るところから一番の良き相談相手でした。
いまは生まれて半年の赤ん坊がいるので、シーズン2はほぼほぼ関わっていなくて、スペシャルサンクスとしてクレジットしています。
子育てを頑張ってくれていて、実際の編集はしていなくても気持ち的には関わってくれていると思っています。
でも、東京で行われた最終話の試写会から終電で帰ってきて「どうやった?」と聞いたら「何が?」と。
奥さんは最終話が公開されたのを知りませんでした。
そしてまだ観ていなくて、彼女は全てが完全に母親になっています。
最終話のシナリオも覚えてないと思います。
ー子育てがありますから、実務に関わってなくても気持ちは一緒にいますよ
馬杉監督:
実は、うちの家族全員が第3話に出ています。
陳さんの「家族」と言って出した写真が僕の奥さんと娘と赤ん坊で、チャイナ服を買って写真を撮って背景だけを合成しました。
小学校2年生の娘が一番厳しくて、ある回では「面白くなかったね」と言われました。
自信が無かった回についてはっきり言われます。
子供ながらこいつやるなと思ったりします。
離婚について
ー離婚の原因は千歳が母親となってしまったからですか?
馬杉監督:
高熱の千秋を病院に連れて行くより、明夫はちまきを作っていたことなどを積み重ねて離婚となったのがあります。
ー明夫は昔から無口であり今も変わりませんが、大事に思いながらも子育て中は会話が足りていなかったのでは
馬杉監督:
そうですね。
「ありがとう」の言葉は、二人の人生の中では初めての会話だったのだろうなと思います。
千歳の人生
ー千歳も一言では表せない苦労なりの色々な人生があったのだろうなと思いました
馬杉監督:
千歳の情報がドラマでは何もないですからね。
彼女は頑張って苦労して千秋を宇宙飛行士にしました。
千歳は自分の事業がコロナで打撃を受けて、そのストレスからキャンプを始めました。
ちょっと小金持ちで、良いテントやギアを持っています。
まさか明夫に素直な言葉を言われるとは思ってなかったので、不意を突かれたような感じでした。
ー「ありがとう」の言葉で明夫に対する千歳の長年の思いが溶けた気がしました
馬杉監督:
大切な事なのでしょうね(大沼さんと二人で苦笑い)。
ー千歳の麻婆豆腐を食べるシーンは昔と違って素の感じでしたね
馬杉監督:
強くならないといけなかったので。
千歳は自立した女性で逞しさも可愛らしさもあります。
ー今やっと二人は対等になれた気がしました
馬杉監督:
それはありました。
「昔は男性の方が立場が上」というような時代背景から、明夫が焚き火をいじっていました。
「今は対等である」ということを、千歳が焚き火を扱う事で表現したかったのです。
大沼さん:
千歳はいいちこのお湯割りを作る際、まずは自分のぶん、その後に明夫のぶんを入れてましたね。
流星群の下で
ー物語クライマックスでの流星群、二人は全く見てなかったですね
馬杉監督:
そうそう。画面を明るくしたらめっちゃ星が映ってるんですよ。
最初は空を眺めていたけど、二人が仲良くなって星に興味が無くなってから星が流れ始めるという。
下を向いている時に流そうと演出をしました。
星を見るより二人の関係が良くて、空は空できれいでみたいな僕自身も好きなシーンになりました。
ロマンチックな場所だけど二人のたわいのない会話に価値がある表現ができたかなと思います。
一夜明けて
ー翌朝千歳はおらずストーブだけが置かれていました
馬杉監督:黙って撤収していました。
ー分かります。別れたけど元気にしていて欲しい気持ち
大沼さん:
でも声はかけない。
馬杉監督:
明夫は幸せ者だと思います。
風邪をひかないようにとメッセージが添えられていて娘からは湯たんぽを、千歳からストーブをもらいました。
自由に生きていても心配してもらっていることが伝わってくれたらすごく嬉しいです。
エンドロールのこと
ーラストの前にエンドロールが挟まり、プレミア公開では観ている人が減っていきました
馬杉監督:
最終話は違う風にしたかった。
大沼さん:
最近はエンドロールの後に続く映画はないですね。
昔は映画館で帰っていいのかどうなのかドキドキしていました。
馬杉監督:
編集の時にストーブのシーンをエンドロールの前なのか後なのかを悩み、結果的に後になりました。
一番良いシーンで1回締めて、エピローグというかおまけにしました。
奥さんとは元には戻らずに明夫の生活は続いていきます。
コロナの日の出が近づいている。
シーズン2はちょっとだけシーズン1より観ている人の背中を押していく作品にしたい。
「変化を求められる時代に坂本明夫だけは決して変わらない。この時代も変わらずキャンプ場で生きていく」という裏テーマがあります。
それでいいんじゃないかと思ってます。